猫になりたいヒト


ねえ、あなた。あたしをどこかに連れてってくれないかしら

にゃー

あなたはいろいろな所を知っているのでしょう?

にゃー

もう、こんなつまらないところから抜け出したいの

にゃー

聞いてるの?

にゃー

生まれ変わったらあたしあなたのようになりたいわ。自由で気ままで羨ましい

そんこともないにゃー

あら、いつから喋れるようになったの?

ついさっきだにゃー

いつから聞いていたのかしら。盗み聞きなんて悪趣味な人ね

僕にそんな趣味はないさ。通りかかったら君が猫とお話していたもんだから

それで? どうして、あんなこと言ったの?

自由で気ままでってやつかい?

ええ、そうよ。猫はとっても自由で気ままだと思うのだけど

そうかな。飼い猫ならまだしも、野良だったら食べるものを毎日探さなくちゃならないよ?

その辺に落ちているものを拾って食べればいいわ

君はそんなものを食べたいのかい?

いいえ、そうね食べたくないわ

だろ?

でも、自由になりたかったのよ。もっと気楽に生きたいの

生きればいいじゃないか

そんな簡単にはいかないわ

そう? ヒトとして生まれても猫みたいな生活はやろうと思えばできると思うけれどね

社会が認めないわ

猫に社会なんて関係ないさ

そんなものかしら

そんなものだよ

なら、いいかもしれないわね

でも猫になったら気をつけないといけないこともあるよ

それは、なに?

体中、ノミでかゆいってこと

あら、それは嫌だわ。猫になるのは止めましょう

そうかい。それは何よりだ



なら今度は、小鳥っていうのはどうかしら?

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